尿の通り道にできる結石を「尿路結石」といいます。尿路結石は尿中に排泄されたカルシュウム、リン酸、シュウ酸などが結晶になったものです。わずかな例外はありますがほとんどの結石が腎臓の腎盂というところでできます。そのまま腎盂にとどまれば腎結石、尿管に落ちてきたものが尿管結石、さらに膀胱に落ちてとまっていると膀胱結石といいます。極くまれに尿道結石もあります。
開業の泌尿器科医を受診するのは尿管結石の患者が大部分です。尿管結石が痛みが強く、治療を必要をするからです。疝痛発作といわれる転げまわり、七転八倒する痛みです。この痛みは心臓の発作のような「死の恐怖を感じる」ことはありません。
尿路結石の治療方法は約20年前に比べ、まったく別のものになりました。それまではお腹を切る開放手術だったのが、身体に傷をつけずに体外衝撃波砕石術(ESWL)で結石を粉々にして排泄させることが可能になりました。
直径5mm以上の結石は自然に排泄されるのに時間がかかるのでESWLの適応になります。しかし、浜松市内の病院ではESWL治療の待機患者数が多く、7mmまでの人は自然に排出するように指導しています。
結石の疝痛発作は石が尿の流れを止めて尿が腎盂の内圧を高め、腎臓がパンパンに腫れた時に起こります。よく「注射が効いて痛みが止まっている」という人がいますが、尿が尿管をよく流れていると痛みがなくなっているのです。
痛みを軽減させ、結石を早く排泄させるためには水分をたくさん摂ること、身体を動かすことが大切です。それに加えて、当院では「結石の痛みをとるツボ」を教えてます。100%近い効果があります。
尿管結石は通常右か左のどちらか一方におきますので生命に異常はないのですが、今年の夏に両方の尿管に石がひっかかった人が2人来ました。(私の40年近い泌尿器科医生活で今までに1人しか診たことがありませんでした)この場合は緊急に尿を排出させる必要があります。
最近の飽食の時代で糖尿病、肥満とともに高尿酸血症が増え、尿路結石も生活習慣病の仲間入りしそうです。疝痛発作のひどい苦しさの時には「もうこりごりだから再発しない方法はないか」と言います。一度尿路結石が出来た人の30%が再発を経験するといわれています。
体外衝撃波(ESWL)などの新しい治療法の進歩によって尿路結石の開腹手術はほとんど行われなくなりました。その分結石再発の予防に対する関心が薄くなって来ています。結石の再発予防は食事療法も薬物療法でもすぐに答えが出るものではないので、病識をしっかり持って、治療や予防を続けなくてはなりません。
結石の再発は何年も経ってから現れます。尿路結石は尿中に排泄されたカルシュウム、リン酸、シュウ酸などが結晶になったものですが、特殊な結石(上皮小体機能亢進症、過尿酸尿症、腎尿細管アシドーシス、薬剤性など)を除いた大半の結石が原因は不明です。同一家族に結石が出来ることもありますが、それが体質なのか、同じ傾向の食事によるのか、あるいは飲料水の成分が関係するのか、はっきりした関係を研究した人はいないようです。
「尿路結石は夜作られる」といわれます。尿が濃縮され、カルシュウム、リン、シュウ酸などが沢山出てくる夜の間に結石が作られると考えられています。朝、昼、夕ときっちり食べて、特に夕飯は早めに済ませ、その時に沢山の水分を摂るようにします。
一日の水分量は尿量を2,000mlをめやすにします。動物性たんぱく質は食べ過ぎない程度に摂り、野菜はほうれん草を除き沢山とります。穀類は気にする必要はありません。カルシュウムは尿路結石の主成分の一つですが、適度なカルシュウムは食物中のシュウ酸と腸の中でくっ付いてシュウ酸カルシュウムになり、大便として排泄してしまうので尿路結石を作りにくくします。牛乳やヨーグルトなどの乳製品が結石予防に非常に役立ちます。ほうれん草にかつお節をかけて食べるのは日本人の昔からの「生活の知恵」です。